Kazenonaka

「風の小径」のさらに小径

映画「日日是好日」

映画「日日是好日」を観た。

樹木希林さんの遺作にあたるこの映画は、

森下典子さん原作の自伝的エッセイがもとになっている。

主人公は黒木華さん演じる典子。

その典子がお茶のお稽古を通じて、五感で季節を感じ、

日日是好日を感じていくというお話だ。

見終わって、心に余韻の残るいい映画だった。

(以下、少し映画の内容に触れます。)

 

お話もよかったのだけれど、私の関心はついつい他のところに…^-^;

まずはお茶のお稽古に使われていたお部屋のこと。

冬と夏では、建具のしつらえが違うのだ。

冬は障子で、外の光が暖かく感じられる。

夏は簾で、いい塩梅に陰が出来て、涼しげに見える。

以前、北村美術館の四君子苑に行った時に、

夏は夏の建具に替えるんですという話を聞いて、

へぇ、日本家屋って衣替えをするように

建具もしつらえを替えるんだと感心した記憶がある。

この映画を見た時に、ああ、このお部屋、

あの時のお話のように、建具を夏仕様、冬仕様に替えるのね!

と、そこに心を奪われてしまった。

 

それから目がいったのは、床の間の掛け軸と茶花。

毎回、かかってる掛け軸がいい。

(茶花もじぃっと何が飾ってあるか凝視した、^-^;)

とくに「瀧」のシーンはよかった。

書を絵のように見るという解釈は腑に落ちた。

 

そして、ある日、典子が水音の違いを感じるところ。

こうした五感で感じる自然の小さな事柄が、

日々の中で、すごく大切なことだと思える。

 

ところで、この映画でのお茶のお稽古は表千家だそうだ。

私は裏だったので、映画をみてあれ?と思ったことがあった。

そう、それはお茶のたてかたの説明のくだりである。

裏は細かい泡を一面にたてる。

だから、樹木希林演じるお茶の先生が

「あまり泡立てないで水面が三日月型になるようにたてるのよ」と

説明があったときに、あれ?っと思ったのだ。

なるほど、そこが表と裏のお茶のたて方の違いなんだ。

でも、この三日月型のお茶のたてかた、

すごく絵になっていて、美しいなぁと思った。

(↓こんなふうに、三日月型に泡のない部分がある。

映画ではこの写真をちょうどひっくりかえした感じで、

本当に三日月のようにお茶がたてられていた。)

日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)

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私も独身の頃、友人に誘われてお茶の先生のところに通った。

私が習っていた先生もおばあちゃん先生で、

もうご主人を亡くされて、松ヶ崎のお屋敷に一人で住んでおられた。

家は日本家屋で、お庭には茶花に使われる花が色々と植えられていた。

(そのお家の雰囲気がすごく好きだったのだ。)

先生はとても可愛らしい方で、

お嬢さんがそのまま歳をとられたという感じの方だった。

 

映画の中の水屋のシーンなどは、

その頃の先生のお宅を思い出させてくれた。

私はあんまり真面目な生徒ではなかったので、

そんなに上達しなかったけれど、

お稽古に通うのは楽しかった気がする。

(とくに花月とかは、面白かったなぁ…と。)

 

おばあちゃん先生が引退された後、

1番のお弟子さんだった方が先生を引き継がれた。

その頃は一人暮らしをやめて実家から車で仕事に通っていたので、

私はよく下鴨神社の駐車場に車を止めて、先生のお宅に通った。

(考えたら、お休みの日に、わざわざ1時間も車を運転して、

下鴨まで通ってたことだなぁと思ったりもする。)

仕事で疲れていたときは、

お稽古せずにお茶だけいただきに行ったこともある。

今思うと、お茶の先生のところって、

単にお稽古するだけでなく、

どこか心のよりどころになっていたんだと思う。

ちょうど典子が試験の前に

先生のところに行ったように…。

 

 

 

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